近年、自然に還りたいという想いから、葬送方法として海洋葬を選択する方が増えています。この記事では、そんな海洋葬の基礎知識やメリット・デメリット、料金相場を解説します。また、安心して海洋葬を行なうために欠かせない散骨施工業者の選び方もご紹介。海洋葬を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
海洋葬とは?
海洋葬とは、遺骨を海に散骨する葬送方法のひとつです。近年、お墓の継承問題や維持管理費の負担から、新しい供養方法として注目を集めています。一般的には、遺骨を粉状に加工し、船上から海へ撒くという方法で行なわれます。
散骨する際はご遺体を火葬し、その遺骨を細かく粉砕しなければなりません。このことを「粉骨(ふんこつ)」と言います。また、散骨場所については、漁業権が設定されていない海域で、海岸から離れた場所(人目につかない場所)で実施することが求められます。
散骨は法律の規制がないため、ある程度、自由に行なうことができますが、上記のようなルールに則って、節度をもって執り行なう必要があります。
海洋葬のメリット
海洋葬には、従来の葬送方法(墓地や納骨堂など)と比べて多くのメリットがあります。ここでは、いくつかメリットをご紹介します。
- 費用を大幅に抑えられる
- 一般的な墓地の場合、土地代や墓石代、また年間の管理費など、数百万円規模の費用がかかりますが、海洋葬の場合はその10分の1程度で実施できます。
- 継承の問題を解消できる
- 少子化が進む現代社会において、お墓の継承者不在は深刻な問題となっています。海洋葬であれば、将来的な管理や継承の心配が不要です。子どもに負担をかけたくないと考える方にとって、これは大きな安心材料となります。
- 場所を選ばずに供養できる
- 散骨は、東京湾や相模湾、また伊勢湾など、故人の思い出の場所や、ゆかりのある海を選んで実施することができます。生前、釣りや海水浴を楽しんだ場所で(人目につかない海域まで行く必要がありますが)、最期の安らぎを得られることは、故人の希望に沿った供養方法と言えます。
海洋葬のデメリット
海洋葬には、いくつかメリットがありますが、その一方でデメリットもあります。ここで押さえておきましょう。
- お参りの場所を特定できない
- 海洋葬の大きなデメリットは、後になって正確な位置を特定してお参りができないことです。海は常に動いています。GPS機能で散骨位置を記録していても、その場所に故人の遺骨が留まっているとは限りません。これは、毎年の命日に同じ場所でお参りをしたい方にとって精神的な負担となることがあります。
- 天候に左右される
- 海洋葬は天候の影響を大きく受けます。特に台風シーズンや冬季は、波が高く船が出航できないことがあります。また、当日の風向きや波の高さによっては、予定していた場所での散骨が難しくなる可能性もあります。そのため、日程調整が必要となり、遠方から参列する方がいる場合は、特に大きな課題となります。
- 家族の意見が分かれやすい
- 従来の墓地と比べて比較的新しい供養方法である海洋葬は、家族内で意見がわかれやすいものでもあります。特に高齢の親族は、伝統的な墓地での供養を望むことが多く、故人の希望と家族の意向が対立するケースが多いです。このような場合、家族間での話し合いと関係者の合意形成に時間がかかってしまいます。
海洋葬の料金相場
海洋葬の料金は、業者や選択するプランによって大きく変わります。
ただし、おおよそ10万円~50万円が相場となっています。この料金には散骨の施工料、船の手配費用、献花代などが含まれています。ただし、火葬や収骨、遺骨の粉砕などの費用は含まれていないことがあるため、正確に知りたいときは業者に見積もりを取りましょう。
最近では、家族だけでなく、友人や知人も参列できる「お別れ会」を兼ねた海洋葬のプランも増えています。このような場合、会食や記念品の費用なども加わり、50万円以上の費用がかかることもあります。
一般的な葬儀と比較すると、海洋葬は比較的費用を抑えることができます。一般的な葬儀では100万円~300万円程度かかるのに対し、海洋葬は基本的な内容であれば20万円前後で済ませることができます。
海洋葬は散骨施工業者に委託するのがおすすめ
海洋葬には、ご自身で行なうか、散骨施工業者に委託するかの二択がありますが、おすすめは散骨施工業者に委託する方法です。
散骨施工業者とは?
散骨施工業者とは、海洋葬に特化したサービスを提供する専門事業者のことです。遺骨を海に散布する際の手続きから、船の手配、当日の執行まで、一連の流れをトータルでサポートしています。多くの業者は、故人や遺族の希望に沿った追悼セレモニーの実施も行なっており、心に残る送り出しの場を演出してくれます。
特に優良な業者は、一般社団法人日本海洋散骨協会の加盟登録を行ない、同協会が定めたガイドラインに則って散骨を実施します。また、専用の粉骨設備を備え、最適な粒度での粉骨を行なうことで、環境への配慮も徹底しています。
散骨施工業者のメリット・デメリット
業者を利用する最大のメリットは、安全かつ節度を持って海洋葬を実施できることです。専門スタッフが同行することで、突発的な事態にも適切に対応できますし、故人を見送る場としての厳かな雰囲気を演出し、参列者全員が心を込めてお別れできる環境を整えてくれます。ここは業者に散骨をサポートしてもらう大きなメリットと言えます。
一方で、デメリットとしては費用面が挙げられます。ご自身で散骨を実施する場合と比べると、当然ながら費用は高くなります。しかし、船舶の手配や各種手続きを含めたトータルコストを考えると、必ずしも割高とは言えません。また、専門家による安全な実施と、充実した追悼セレモニーを考えれば、その価値に見合った費用と言えます。
上記の通り、散骨する際に必要な手続きの煩雑さやサービス内容などから、散骨する際は業者に委託するのが推奨されます。
散骨施工業者の選び方
散骨を検討する際、業者の選定はとても重要です。ここでは、信頼できる業者を選ぶための3つの重要なポイントをご紹介します。
希望の散骨場所に業者が対応できるか
散骨では、業者によって対応可能な散骨場所が異なります。東京湾、相模湾、伊勢湾など、人気の散骨スポットがありますが、すべての業者がこれらの場所に対応しているわけではありません。また、沖縄や北海道など、遠方での散骨を希望する場合は、その地域に拠点を持つ業者を選ぶことが重要です。
特に、故人や遺族の思い出の場所での散骨を希望する場合は、事前に業者の対応エリアを確認することをおすすめします。また、海流の状況や周辺環境なども考慮に入れたうえで、最適な散骨ポイントを提案してくれる業者を選ぶことが大切です。
散骨の料金が明朗会計となっているか
業者を選ぶ際は、料金体系の明確さもチェックすべきです。基本料金に含まれるサービスの内容、オプションサービスの料金、追加料金が発生する条件などが明確に提示されているかを確認しましょう。
たとえば、船の貸切料金、散骨証明書の発行料、追加参列者の料金、献花料などの費用が明確かどうかをチェックします。また、支払方法や返金規定などについても事前に確認することをおすすめします。
後になって予期せぬ費用が発生することを避けるためにも、見積書を貰うことも忘れないようにしましょう。
一般社団法人日本海洋散骨協会の加盟事業者かどうか
信頼できる業者を見分けるポイントとして、一般社団法人日本海洋散骨協会への加盟が挙げられます。同協会は、海洋散骨の適正な実施と健全な発展を目指して設立された団体で、加盟事業者は厳格な審査基準をクリアしています。
加盟事業者は、環境への配慮や法令順守はもちろん、遺族への対応や散骨の実施方法についても一定の基準を満たしています。また、定期的な研修や情報共有を通じて、サービスの品質向上に努めています。さらに、協会加盟事業者は散骨後のアフターフォローも充実しており、記念日や命日に合わせた供養サービスなども提供していることが多いです。長期的な関係を築きたい方におすすめです。
まとめ
海洋葬は、自然に還る葬儀として注目を集めており、一般的な葬儀と比べて費用を抑えられるメリットがあります。一方で、天候に左右されやすく、お参りの場所が限定されるというデメリットもあります。これらのメリット・デメリットなどを踏まえたうえで、海洋葬をするかどうか考えてみましょう。